簿記

ゼロから始める簿記勉強:決算整理事項『売上原価』

決算整理で登場する『売上原価』

売上原価とは一体なんなのでしょうか?
売上原価を求めることになんのいみがあるのでしょうか?
そして売上原価の求め方とは?

売上原価について今回は詳しく見ていきましょう。

売上原価とは

売上原価とは『当期の期中に売り上げた商品の原価』です。要素は費用に属しています。

商品取引に関する仕訳には『分記法』と『三分法』が存在していますが、分記法で仕訳をしている際には売上原価自体がその仕訳で算出されています。

しかし、期中の仕訳では三分法を使う事がポピュラーであるために期中の仕訳の中で売上原価が分からない様になっています。

それぞれの場合で見ていきましょう。

分記法の売上原価

分記法では必ず『商品』と『商品売買益』という科目で仕訳をおこないます。
この『商品』という勘定科目が『売上原価』となるのです。

4月1日、A社より商品300円を現金を支払い仕入れをした。

4月5日、上記で仕入れた商品をB社へ500円で販売し、代金を現金で受け取った。

分記法で仕訳をしてみましょう。

分記法で仕訳
日付借方科目金額貸方科目金額
4/1商品300現金300
4/5現金500商品300
商品売買益200

この様に仕訳されます。

この仕訳方法であれば売上原価、つまり売上に対する仕入れ値=『商品』=『売上原価』という式が成り立ちます。

『商品』としての仕入れた値段がそのまま販売時にも引き継がれています。

仮に期中全てを分記法で仕訳したと仮定して仕訳を集計してみましょう。

分記法による仕訳の集計
借方勘定科目貸方
900商品800
商品売買益700

この集計では

  • 現時点での商品有高=商品勘定の借方金額
  • 販売された商品『売上原価』=商品勘定の貸方金額
  • 商品を販売して得た利益=商品売買益勘定

分記法で販売を行った場合の仕訳では常に売上原価+商品売買益によって仕訳がされますので、商品勘定の貸方金額=売上原価になるということは仕訳を見ても一目瞭然です。

一見、この方法で毎回仕訳をしていけば何の問題も無い様に思えますが、根本的に大きな問題が発生してしまします。

それは、

『とにかくめんどくさい!』

1つ2つの商品売買でなら分記法での仕訳をしていけますが、毎日毎日取引を大量におこなう事を前提とした場合にはこの様な仕訳をしていられません。

その問題を解決するために期中の仕訳は『三分法』を使用する事が全なのです。

三分法の売上原価

分記法の手間を省く事のできる『三分法』の場合での商品売買について一度見ていきましょう。

三分法は『仕入』『売上』『繰越商品』この3つの勘定科目を使用して商品売買を仕訳していく方法です。

4月1日、A社より商品300円を現金を支払い仕入れをした。

4月5日、上記で仕入れた商品をB社へ500円で販売し、代金を現金で受け取った。

先ほどと同じ問題を三分法で仕訳していきましょう。

三分法で仕訳
5日付借方科目金額貸方科目金額
4/1仕入300現金300
4/5現金500売上500

三分法では商品の仕入れを『仕入』勘定、売上げを『売上勘定』で仕訳していくので売上に対していくらで仕入れた商品が売れているのかを知ることができせん。

先ほどと同じ様に三分法で期末まで集計したと仮定してみましょう。

三分法による仕訳の集計
借方勘定科目貸方
売上900
600仕入
  • 売上勘定には当期の売上合計
  • 仕入勘定には当期の仕入合計

この二つが集計されているのがわかります。

肝心の『売上原価』は分かりません。

三分法で期中の仕訳をおこなっている場合、仕訳の集計をしたところで『売上原価』は求めることができないのです。

売上原価が分からないということは一体仕入れにいくら使って、いくら儲かったのかが分からないため、企業の経営成績を正確に出すことができません。

それではどの様にして売上原価を求めていくのか?

三分法を使用した場合の売上原価の求め方を見ていきましょう。

売上原価の求めかた

先程、三分法の集計では売上原価の算定ができないと言いましたが、そこで登場するのが『決算整理』の売上原価の算定です。

思い出してください。三分法とは『仕入』『売上』『繰越商品』この3つを使って仕訳するため三分法を呼ばれるのです。

そして期中の仕訳には一切繰越商品という勘定科目を使用していないことが分かるでしょうか?

そうです、この『繰越商品』という科目を使って売上原価を算出していきます。

繰越商品とは?

繰越商品(資産)とは前期を繰り越したり、当期を繰り越す商品金額。つまり期末時点で売れ残っている商品の金額の事を指します。

『棚卸し』という言葉を聞いた事がある人も多いのではないでしょうか?

棚卸し作業は今ある在庫(売れ残った)商品金額を明確にするために行われています。

『期首商品棚卸高』=前期繰越商品、期首時点で当期に繰り越されている商品原価(仕入値)。

『期末商品棚卸高』=期末繰越商品、期末時点で当期から次期へ繰り越される商品原価(仕入値)。

売上原価の算定方法

それでは決算でどの様に売上原価を求めていくのか、早速見ていきましょう!

3月31日、決算において仕入勘定で売上原価を計算しなさい。なお期首商品棚卸高は300円、期中の仕入高は600円、期末商品棚卸高は200円である。

まずは売上原価がどの様に求めらるのかを見てみます。

売上原価=『期首商品棚卸高』+『期中の仕入高』-『期末商品棚卸高』

単純に数字を当てはめてみると

700=300+600-200

つまり売上原価は700円であると計算できます。

期中に売り上げた商品の中には期首商品棚卸高も含まれているので、期首商品棚卸高も仕入れの一部として考えます。

期首商品棚卸高と仕入高の合計から期末商品棚卸高を差し引けば期中に売れた商品の原価、つまりは売上原価が求められるのです。

期末商品棚卸高は期中の取引で残った商品であることから仕入高の一部である事がわかります。

理屈が分かったところで実際に仕訳をしていきますが、まずは決算整理前の試算表はどうなっているでしょうか?

決算整理前残高資表
借方勘定科目貸方
300繰越商品
600仕入

この様な試算表が作成されているはずです。

ではここから仕訳をおこなっていきます。

①期首商品棚卸高を仕入勘定の借方へ振り替える。
 先ほど期首商品棚卸高を当期の仕入れとして計算するといいました。
 つまり勘定科目を振り替える必要があります。

①期首商品棚卸高の仕入勘定への振替
日付借方科目金額貸方科目金額
3/31仕入300繰越商品300

この様に仕訳をすれば期首商品棚卸高を仕入勘定へ振り返る事ができますね。

②期末商品棚卸高を仕入勘定の貸方へ振り替える。
 次に期末商品棚卸高(仕入高の一部)を繰越商品勘定へ振り替えます。

②期末商品棚卸高の繰越商品勘定への振替
日付借方科目金額貸方科目金額
3/31繰越商品200仕入200

ここまでくれば後は決算整理前残高試算表へこの数字を当てはめます。

③決算整理前残高試算表へ決算整理仕訳を反映させる。

③決算整理仕訳の反映
借方借方勘定科目貸方貸方
200300繰越商品300
300600仕入200

④借方、貸方を計算して決算整理後残高試算表を作成しましょう。

④決算整理後残高試算表
借方勘定科目貸方
200繰越商品
700仕入

次期へ繰り越す商品と『当期の売上にかかった仕入値』=『売上原価』の算定ができました。

まとめ

今回は売上原価についてみてきました。

売上原価の算定に関してはほぼ公式かの様に『しーくり くりしー』を覚えている人が多いかもしれません。

しかしなぜその様な仕訳が必要なのか?ということを理解しておくことが大切です。

自分の頭で理解することよって簿記がとても楽しく感じる様になってきたことは間違いありません。

そして、しっかりと理屈を理解していくことでさまざまな問題に対応していく力がついていくのです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

まとめ